君と春を



会場を後にし、連れられるまま最上階の部屋へと向かうエレベーターにに乗ると、その動きに誘われたように突然強い目眩が襲う。

「…!し……んたさ……」

崩れ落ちそうになる身体。
咄嗟に彼のスーツを強く掴む。

「美月!……大丈夫。俺がいるよ。
大丈夫。安心して……。」

慎汰さんは逞しい胸と大きな手で私をぎゅっと抱きしめ、倒れないように私を支えてくれる。

「深呼吸して?俺のことだけ、考えて。

ほら、お前は今俺の腕の中だろ。

何も怖くない。」

諭すように、宥めるように、静かに語る彼の言葉を聞いていると震えが止まって行くのがわかる。

言われたとおり深呼吸すると、彼の纏う空気が自分の中に染み渡るようで、不思議なくらい心が落ち着いた。



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