君と春を
エレベーターが到着すると同時に慎汰さんは軽々と私を抱き上げて部屋へ運び、革張りのソファに私を下ろして膝をついて顔を覗き込む。
「大丈夫か?」
心配そうに頬を撫でる彼。
「………うん。」
目一杯微笑んでそう答え、大きな手に私も手を添える。
「………冷えてるな。
風呂、用意するから。」
そう言ってバスルームに向かおうとする彼の背中に何故か急にとてつもなく不安を感じて………涙が零れる。
「っ!ま…って。行かないで。
ひとりに…なりたくない。」
ピタリと足を止め振り向き、涙が溢れる私を見て狼狽える彼。
「どうした?」
切なそうに顔を歪め、私を引き寄せる。
「慎汰さんが………いなくなる気がして……。」
呟くようにそう伝えると、彼はきつくきつく私を抱きしめて愛おしそうにキスをくれた。
「…俺の心が溶けて美月に流れていけばいいのに。
そしたら俺がどんなに美月を想ってるか知ってきっと恥ずかしくなるよ。
美月…愛してる。
お前だけなんだ。
絶対に一生離さないよ。
お前以上に大事なものなんかない。
ずっとずっと俺が守る。
だから……何があっても安心していていいんだよ。」
心に沁み渡るように囁かれる言葉に包まれていると、見失いかけた自分を取り戻せるような気がした。
「………はい。
慎汰さんがいれば…ちゃんと、安心して立っていられます。
慎汰さん……私も愛してます。」
抱きしめられて彼の鼓動を感じ、同調するように心が落ち着く。
ーピンポーンー
「………?どなたか呼びました?」
「………ルームサービスだよ。
俺、出るからちょっと寝室入ってて?
その顔、俺以外に見せたくない。」
「…あ、すみません。泣いたりしてみっともない…」
「可愛いから大丈夫。立てる?」
「はい。慎汰さんのおかげでもう何ともないです。」
すると彼はクスリと笑って額にキスを落とし、私を寝室へ促した。