君と春を
「美月の誕生日は一緒に出かけようよ!」
そのひとことで出かけたあの時は本当に楽しかった。
「ね、これ似合うよ!美月にはこういうのがいいと思う!」
そう言って私にワンピースを当てて鏡を見る茉莉。はしゃぐ姿はいつものように明るくて楽しい。
元来人見知り傾向にありあまりたくさんの友だちを作るタイプではない私に対して茉莉は社交的で交友関係も広く、低い身長とクリクリとした大きな瞳の可愛らしい風貌も手伝ってみんなの人気者だった。
「せめて160センチあったらなぁ。」
「茉莉は今のままで十分かわいいでしょ。みんなに好かれてるし。」
「そんなの…一番好きな人に好きって言われなかったら意味ないもん。」
俯いて呟く茉莉。
………?
ちゃんと好きな人と付き合ってるのに何を言ってるんだろう。…彼とうまく行ってないのかな。
そう思ったけれど…直接聞くことはしなかった。
その日、塾に行くと言っていた茉莉と別れた私は、待ち伏せしていた優也と会うことになる。