君と春を
塾のバイトが終わり、ビルから出る。そこにいたのは渡会くんだった。
「ちょっと話したいんだけど。」
珍しく真面目な様子にNOとは言えない雰囲気を感じて思わずこくりと頷いた。
駅までの道の途中にある小さな公園のベンチに座るように促され、その途端に話は切り出された。
「あのさ、俺…君が好きなんだ。
俺の………彼女になってよ。」
まっすぐな視線を私に向けてくるその姿はとても彼らしく、好感が持てた。
だけど……私はきっともう男の人を好きにはなれない。彼にも…そんな風に言われても好きという気持ちは湧かなかった。
『ごめんなさい』
そう言おうとした時、
「なんで!なんでよ、美月!」
声のする方を向くと、そこにいたのは茉莉だった。