君と春を



「春瀬くん!?美月に何かあったの!?」

3コールで出た百合先生の声は酷く心配そうだ。

本当に美月を大事に思ってるんだな。

………ちょっと普通の医者と患者とは違う関係のような気もする。

「美月は…、ちょっと参ってます。聞きたいことがあって…。

渡会茉莉という女性をご存知ですか?」

「……………茉莉?木本茉莉?」

「いえ、渡会です。」

「…………その女は、美月の親友……のフリをしてたサイテーな女よ。嫉妬心を美月にぶつけて…美月が誰も信用せずに私以外との関係を全て断ち切る状況を作った張本人。

ずっと隠してた茉莉の本心を知った時の美月は可哀想で見ていられなかった。

………茉莉がどうかしたの?」

「……昨日のパーティで会ったんです。俺が見つけた時は美月に無理やり名刺を渡していて……美月は明らかに動揺していました。」

昨日の状況と今朝の様子を伝える。

「……そっか。わかったわ。何も聞かずに、寄り添ってあげて。

きっと美月はあなたに心配かけまいと振る舞うだろうから、疲れたらいつでも寄りかかれるように……」

「大丈夫です。俺が守ります。」

「…………ありがとう。

あなたがいて、本当によかった。」

……付き合いが長いとはいえ、普通医者はこんなに患者を心配するものだろうか。

ふとよぎった疑問。あえて口にはしなかった。



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