君と春を
見慣れた街に着き、いつもの花屋で母の好きだったマーガレットを買い、墓前に向かう。
花を手向け、線香を焚き、お父さんの好きだった日本酒と斗真の為に焼いたクッキーを供えると切なさと悲しさに襲われた。
「…………っ!」
触れて来た温もりに驚いて振り向くと慎汰さんが手を握ってくれていた。
「俺がいるよ。…側にいる。」
………そうだ、私は一人じゃない。
「……そうでした。」
ポンポンと頭を撫でてくれる手はいつものように温かい。
自分だけ幸せを感じていることが家族に対して後ろめたくはあるけれど、
『どうか見守って欲しい』
その思いを込めて手を合わせた。