君と春を



百合先生が病室にやってきた。

「その写真は……美月の家族ね。」

そう話す百合先生は悲しそうだ。

「……はい。日付は10年前です。」

「………で、手紙は読んだ?」

「……はい……」

「そう?かして。」

冷たく言い放ち、俺の手から奪うように手紙と写真を取る。

それを読んで…ぐしゃりと潰してゴミ箱へ捨てた。

「美月は悪魔に囚われてしまったのよ。

可哀想に……。

悪魔がいなくなった今でもこんなに苦しめられている。

…いつになったら解放してあげられるの。」

俺はただ百合先生の言葉を聞く。

「桜を散らすっていうのはね、命を奪うっていう意味。

美月が大好きだった桜を…優也は全部散らせた。」



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