君と春を
秋が近づいてきた涼しい夕方、学校近くの川沿いの桜道を並んで歩く。
「優也は桜って好き?」
「んー、好き…かな。なんで?」
「うちの庭に昔からある大きな桜の木があってね、それを見ながら育ってきたから私にとって桜は『大事な家族』って感じがするの。だから大好き。
散ってるのも好き。風に舞ってすごく綺麗。
来年は一緒にお花見したいな。」
一方的な私の話を柔らかい笑顔で聞いてくれる優也。
「わかったよ。たくさんお花見しよ?」
そう言って、おでこにキスをくれた。
幸せだった。
この頃の私はその後待ち受ける地獄なんて想像できる訳もなく、大好きな恋人と過ごす日常が、ずっと続くと思っていた。