君と春を
百合先生は彼女の居場所をなくしたくないとも言った。
「美月、語学堪能でしょ?
どうしてかわかる?
……目が覚めてから高校卒業までずっと、ひとりだったから。
頼みの綱の親友……は……別の高校だったしね。
好機の目に晒されて、気持ち悪がられて。
優也から守られる砦になるはずの寮生活がまるで針の筵だったのよ?
それでも美月は、お父さんが決めてくれた学校だからって転校はしなかった。
結果、元々興味のあった語学の習得に拍車がかかってね。
それなら誰とも関わらずにひとりでできるでしょ?その頃には人間不信も入ってたし。
空いた時間は全てそこに費やして…その結果、英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語にポルトガル語を習得した。
そして外語大に入って…今の職を得た。」
「………………」
「美月が、高校で生きて行くための手段だったのよ。」
その結果得た居場所。
それが、今となっては俺の隣か…。
守ってやりたい。
何としても。
ずっと、安心していられるように。