君と春を
会いたい、渡さない。
その翌日、仕事を終え病院へ向かおうと会社を出た俺の前にある人物が立つ。
「春瀬さん…ですよね。」
その顔を見て思い出す。
……そうだ。パーティで会った女だ。
「…………何か?」
営業スマイルで問う。
「…美月は………どうしていますか?」
「どう…とは?」
「あの……元気にしていますか?美月に会いたかったんですけど、ここで待っててもなかなか会えないので。」
…美月に会いたい?
「何の用事で?」
「………親友に会いたがったらダメでしょうか。様子をみたいんです。」
口元に手を運ぶ仕草。その指には結婚指輪らしきものが光る。
「………百合先生に聞きました。あなたは美月が一切人を信頼せず、心を凍らせるようになった原因だと。」
「!」
「美月があなたに会いたいと思いますか?それとも何か美月のことでご存知のことが?」
「…っ!い…いえ、そうでは…。」
「…………そうですか。では、失礼。」
女を残して病院へ向かう。
あの狼狽えかた、明らかに何か知っているようだった。
でもなんで…。中身は本当に10年前に書かれたものだった。
『みらいゆうびん』は何年後にでも郵便を届けるサービスをしている団体だった。彼女は関係ない。
わからない。
でも……美月は俺が守る。あんな女にこれ以上振り回されるなんて、させるわけないだろ。