君と春を
付き合って3ヶ月が過ぎようとしていた頃、喧嘩をした。
原因は私が茉莉の彼と廊下で話していたのを優也に見られたこと。
もうすぐくる茉莉の誕生日をどう祝ってあげようか、親友の私の意見を聞きたいと頼まれて話していただけだった。
なのに…
「なんで美月が話す必要がある?女のプレゼントなんか自分で考えることだろ?
美月と話したかっただけなんじゃないの?
美月だって俺以外の男とあんなに楽しそうに話すなんて浮気性なんじゃないの?」
「なっっっ!酷いよ優也!
私はただ茉莉の彼が茉莉のことすごく大事そうに話してたから嬉しくて協力したかっただけだよ!?
そんな言い方しないで!」
「それってさ、俺は美月のこと大事にしてないって言いたいの?だから気を引きたくて他の男にニヤニヤしながら近づいてるの?」
「そんなこと思ってないし、してないよ!でも優也は束縛しすぎ!
優也以外の男の子と話すな近づくななんて無理に決まってるじゃん!」
付き合いを始めて以来、普段の柔らかい優しさの反面、日に日に束縛がキツくなる優也。
俺以外の男と話すな。
俺以外の男に近づくな。
俺以外の男に笑顔を見せるな。
最初は『ヤキモチ焼いてるんだな』と軽く考えていた私もさすがにそのキツさにイライラが募っていた。
「もういい!そんなに言うなら一緒にはいられない!
私は優也の人形にはなれない!
別れる!」
一方的に告げて走ってその場を去った。
…優也のバカ。
だって浮気性なんてホントにひどい。
なんで私が優也しか見てないって信じてくれないの。
……そう。
悲しみを忘れたくて縋るように付き合いを始めたけれど。
ちゃんと向き合うことで見えた彼を好きになるのにそう時間はかからなかった。
ちゃんと、優也が好きだった。
なのにまるで気持ちを疑うような態度や言葉が苦しかった。
それと同時に…
「俺は美月を部屋に隠して閉じ込めたい。
誰にも見せないで自分だけのものにしたいよ。
俺だけが美月の全てになるように。
ってか、いずれそうするから。」
時々見せる狂気のような感情に危機感をを感じてきたのもこの頃だった。
進学先も同じじゃないと許さないと私の成績までチェックする。
段々とエスカレートする要求はコップに溜まっていく水のように少しずつかさを増し、この日溢れたのだった。