君と春を

卒業




「みつき!一緒にサッカーやろ!」

小学4年の弟、斗真は地元のサッカーチームに通っている。

将来はプロになるんだとキラキラした瞳で語ってくるこの子がとっても可愛い。

「斗真、私は今からクッキー作るの。」

弟の大好きなミルククッキーを焼くことを伝えると、斗真ははちきれんばかりの笑顔で喜ぶ。

「マジ!?みつき大好き!

じゃあできるまで遊んでこよ!
じゃね、みつき。」

お姉ちゃんと呼ばずに名前で呼ぶことも可愛く思えてしまう。

サッカーボールを抱えてバタバタと外へ行く斗真を見送り、お母さんと台所に立った。

ふと、お母さんが言う。

「美月。この前会ってた男の子は誰?

何だか様子がおかしかったってお父さんが心配してたわ。」

「…………」

心臓がドクリと鳴った。…やっぱりお父さんは気づいてたんだ。

私が怖がってたこと。

どうしよう。心配はかけたくない…

「ねぇ、美月。

貴方が家族を大事に思ってくれてるのはよくわかってる。

心配かけたくないのよね?

でも、隠し事をしてまで貴方がひとりで不安や悩みを抱えてる姿を見るのは心配するより辛いことよ?」

「…………」

心配はかけたくない。

でも、彼が嫌だとか別れたと思ってるのにとか、親に相談するほどのこととは思えなかった。

「うん。ありがと。

何かあったら相談するから。
まだ大丈夫だよ。」

そう言って笑うと、お母さんは困ったような顔をしながらそっと笑ってくれた。



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