君と春を



百合先生はこの10年、ずっと私を見つめ、守り、支え続けてくれた。

事件があったのはちょうど結婚したばかりの頃。新婚で幸せいっぱいだったはずのその時間は、ただでさえ苦しいものだったはず。

それなのに…更に私の主治医になり、私の苦しみや悲しみまで引き受け、私が前を向いて生きることができるまでは…幸せになるまではと罪悪感を抱きながら過ごしてきた。


そう、ずっとずっと……自分を犠牲にしてきた。


そしてそのことに気づきながらもどうしようもできなかった私。

申し訳なさでいっぱいになり検診をしばらくすっぽかしたこともあったけれど、大学にまで押しかけてきて

『あなたが私を拒否するなら私は離婚する』

そう言い放ち、無理やり検診に引っ張っていった行動力に完敗した。

そんな百合先生が幸せそうに微笑む姿を見られることは私にとっても本当に幸せなことで、溢れてくる涙を止めるなんてできなかった。

それと同時に…胸のつかえがとれたようなスッキリとした気持ちと罪責感から解放される安堵の気持ちでいっぱいになった。



< 214 / 222 >

この作品をシェア

pagetop