君と春を
最後の時
4月。新しい生活が始まった。
全寮制の女子校。
家族で過ごす最後の日に弟の為にクッキーを焼き、お母さんと料理をした。
「美月、誰かに口にするものを出す時は必ず心を込めなさい。
料理然り一杯のコーヒー然りよ。」
料理好きの母らしい言葉だった。私は嫁に行くわけでもないのに。
そしてその話をそっと聞いている父の表情はとても優しくて。
クッキーを頬張る弟はとっても可愛くて。
あぁ、私はこの家族が大好きなんだな。
そう実感した。
「たくさんメールするから寂しくないよ。そっちでも友達できたら紹介して?」
茉莉はそう言って笑ってくれた。