君と春を



…何が起こったかわからない。


どうして私は机に仰向けに寝ているのか。

どうして優也は私を上から見下ろしているのか。

押さえつけられている黒い大きな実験用の机からは、ひんやりと冷たい感触が背中に伝わってくる。

「……優也?なにを……っ!」

柔らかく笑う優也の瞳は黒く鈍く光っているように見える。

この瞳は……私が感じていた狂気を含む瞳だ。

「なにって…。美月、いくら言っても俺から離れようとするだろ?

だから、解放してやろうと思って。

そのかわり……一生忘れないように、俺を刻みつけてあげるよ。」

「刻み付けるって……っ!やめ…!」

押さえつけられている手はびくともしない。それどころか必死でもがいているというのに両手を片手だけで抑え込まれてしまう。

ーこんなに力の差があるなんて。

「ふふ、美月だっていつまでも子供じゃないんだから俺が何したいかわかるだろ?」

空いた手で頬を撫でられ、首のストールを抜き取られる。足をジタバタさせても空振りばかりでどうにもならない。

「やめっ…んっ!」

塞がれてしまった口からは悲鳴も叫び声も出ない。欲望のままに貪られるだけ。

「……っ!んっ………やっ!」

抵抗する力も塞がれて頭がパニックになる。

気づくと…両手は机の端の何かにくくりつけられていた。



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