君と春を
馬乗りになって見下ろしてくる優也は悪魔のようだ。確かに微笑んでいるのに、瞳が怖いくらい冷ややかに光る。
きっとこの顔は、私にずっと隠してきた狂気の部分だ。
「……力で俺にかなうはずないだろ?
大人しく俺を受け入れろよ。
最初で最後。これで俺から離れられると思えば我慢できるだろ?」
「そんなこと…っ!」
必死に繋がれた手を解こうともがく。
「できるよ。…優しい優しい美月。
これ以上家族や親友を心配させたくないだろ?」
「…っ!」
そうだ。みんな私を心配している。
お父さんもお母さんも学校や茉莉のご両親に、娘を守りたいから助けて欲しいと頭を下げてくれた。
茉莉はいつも、私を守るように寄り添って笑ってくれた。
幼い斗真ですら、『元気のないみつきに』そう言って慣れない手つきでクッキーを作ってくれた。
……抵抗する身体から力が抜ける。
涙が零れる。
もう、委ねるしかないんだ。
「……そう。それでいいよ、美月。一生忘れられなくしてあげるから。
いつか俺以外の好きな男に身体を触られることがあっても…その度に俺を思い出すんだ。
ふふ、それサイコーだろ?美月の心が死ぬまで俺のものだっていう証拠。」
シャツのボタンにかけられる手。
「……っ、や…だ…優也……っ!」
「泣いてるんだ。泣き顔も好きだよ。
俺だけの泣き顔だろ?
…もっと、見せて。」
優也はもう止まらなかった。
私は彼にされるがままその欲望と熱を受け入れた。
後に残ったのは、体の痛みと…
心に深く深く刻まれた大きな傷だった。