君と春を



気づけば沈みかけた夕日の中、手を引かれて寮への道を歩いていた。

「もう美月には会わないよ。約束する。死ぬまで会うことはないから。

……でもね、きっと10年後も君は俺のことで頭が一杯になるよ。

それと。

ねぇ…美月、桜が散るのって綺麗って言ってたよね。たくさんの桜を散らせて見せてあげる。」

「桜…?何言ってるの?優也。」

「……今にわかるから。
美月の心を永遠に確実に俺の物にするおまじない。

いいだろ?」

「……っ!」

反論は聞かないとばかりに降ってきたキス。


最後のキス。


それはとても柔らかくて……


とても、憎らしかった。



< 30 / 222 >

この作品をシェア

pagetop