君と春を



その夜、突然連絡が入る。

「冬瀬はいるか!?」

その電話で私が聞いたのは自宅が火事に見舞われ、家族みんなと連絡が取れないということだった。

訳もわからず先生の運転する車で家へ向かう。

信号がもどかしく、飛んで行きたい気持ちばかりが先へ先へと行った。

着いた先には……真っ黒に焼け落ち、所々まだ燻っている家。

「…!!!!!!!」

うそ…!こんな事…!……皆は?

「お父さん!お母さん!斗真!」

力の限り叫ぶ。

皆どこ…!


「美月!」


呼ぶ声に振り向くと茉莉が血相を変えて走ってきた。

私を抱きしめ、きっと大丈夫だよと背中をさする。

「茉莉…茉莉…!皆がいないの!

どうしよう!どうしよう!皆が…」

錯乱状態の私をギュッと抱きしめてくれる。


庭に咲く桜が…まるで助けを呼ぶように風に花びらを散らしていた。






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