君と春を
その後私たちは病院へ向かった。
着いた先は……『霊安室』
身元確認をと言う警察官であろう人の顔は心苦しそうだ。
…あぁ、そ…っか。
皆は………
足を無理やり動かし、通された扉の向こう。
鼻を突く『何か』が焼け焦げた匂い。
白い布が掛けられた3つのベッド。
「あなたにこれを見ていただくのは大変酷なことだとわかっています。
どうか……心を強く持ってください。」
気遣ってくれているんだろう言葉も、流れるように頭を抜けてしまう。
足元がフワフワしていて現実じゃないみたい。
震える足を進め、ベッドの前に立つ。
布が静かに捲られると、そこには
「!!!!!!!!!
………お…かあさ…ん?」
長かった髪も優しい顔も面影すらない。
爛れた皮膚と焦げた匂い。
でも間違いなく母だった。
だって首に掛かっていたのは…私が以前誕生日にプレゼントしたネックレスだったから。
お父さんも…
斗真も…
私が知ってる顔じゃなかった。
どうしてこんな地獄になってしまったのだろう。
私の心は、粉々に砕けた。