君と春を
「わしのとこにも情報はない。」
「……そうですか。いつもありがとうございます。」
「気を落とさんで。いつか必ず巡り会える。君の両親が出会ったように。
いつでもおいで。わしは生きてる限りここにいる。
いつまでもあの本を探すよ。」
「…………はい。」
「ところで……」
「はい?」
ニヤリとするご主人。この人は時々こういう顔をする。
「美月はいつになったらここに男を連れてくるんだ?」
「……………」
呆れて言葉も出ない。さすがイタリア人…。
「いつも言ってますけど、私はそんなもの要りません。ひとりがいいんです。」
毎回必ずここに来る度同じやりとりになる。
「…困ったお嬢さんだな。愛を拒否して生きていけるわけないだろうに。
…まぁ、いつかその心に踏み込んでくれる紳士が現れることを祈ろう。」
肩を竦めるようにして困ったように笑ったご主人は窓の外を眺め、夏の陽射しに眩しそうに目を伏せた。
そして滞在していた4日間。
探し続けたけれど、収穫もなく日本に戻った。