君と春を
「斗真……っ!…………あ……」
飛び起きるとそこはいつもの私の部屋だった。必要ないものは一切置いていない、シンプルで……女の部屋だと言うのに無機質だ。
また……同じ夢を見た。
冷や汗をかいて震える指先。
強すぎる鼓動。
無意識に流れている涙。
壁の時計はまだまだ5時前を指し示している。
「ゆ……め……か……はぁ。」
あれから何年経っても助けを呼ぶ声が耳から離れない。
しかもこんなにクリアで現実的に響くなんて。
まるで……今にも腕を掴まれそうなくらい近くに感じる。
それに私は……その声を実際には聞いていないのに。
ここしばらくこんな風に目覚めることがよくある。
その度に身体が疲弊していく。
水を一杯飲んでまたベッドに入るけれど眠れる訳もなく、震える身体を抱きしめるようにぎゅっと両手をまわし、夜が明け切るのを待った。