君と春を
想いを伝える
大事に本を抱え、帰りのユーロスターに乗る。本当は墓前で祈りたかったけれど時間がないこともあり、できなかった。
隣り合う身体が自然と寄り添う。肩に回された大きな手に包まれる心地よさを感じ、無意識に彼に身体を預けてしまう。
誰かのそばにいてこんなに心が穏やかなのはいつぶりだろう。
……そもそもそんなこと、きっとなかった。
私はきっと、……違う。
たぶんずっと前から……もう心は溶かされていた。
いろんなことを怖がって、気づかないふりをしてたんだ。
信じた人に裏切られるのが怖くて…失うことが怖くて…怯えていたんだ。
この人なら……もう一度だけ、
最後にもう一度だけ、
信じてみてもいいだろうか。