君と春を
「…真っ暗なら俺が火を灯すよ。
空っぽなら俺が満たしてあげるよ。
だから……俺のそばで笑ってて。
好きだよ。…美月。」
そう言いながら頬を伝う涙を拭う温かな手。
その表情はどこまでも優しく…少し切なそうだ。
もう一度だけ
もう一度だけ
この温かな手と彼の想いを
信じる力を…持ってみようか。
彼の手にそっと自分の手を添える。
一瞬、決意するように瞳を閉じてから視線を合わせて……
できるだけ精一杯微笑む。
「……はい。私も…あなたが好き。」
一瞬見開いたほんのり茶色がかった綺麗な瞳が切なく歪む。
胸に押し付けるように抱きしめられて気づいた彼の鼓動は
私ほどじゃないけれど
ドキドキと早かった。
「ありがとう。大事にするよ。」
その声にコクリと頷き、私も彼の背中に腕を回し、ぎゅっと抱きしめた。