君と春を
甘い時間。蘇る恐怖。
「おはようございます。」
出勤して専務室に入ると既に美月は仕事をしていた。
「おはよう。」
トレンチコートをハンガーに掛けて鞄から自宅に持ち帰った資料や書類を出す。
デスクに座り、パソコンを起動させていると、
「どうぞ。」
何も言わなくても美月がコーヒーを持ってくる。その表情は笑顔だ。
俺だけの笑顔。…最高。
でもそれは一瞬のこと。手元の手帳に目線を落とした次の瞬間には別人のようにクールで無表情な彼女になる。
「ではスケジュールの確認を。」
…これが『恋人』になってからの朝の日課だ。