ヒカリ
「えれなってどんな字書くの?」
「恵む、おうへんに命令の令、奈良の奈。」
男の人は、私の言葉を復唱しながら、足元に転がっていた木の枝で地面に『恵玲奈』と書いた。
「この字?」
「そう。」
「ふーん。」
どうして。
どうして、私は初対面(というべきかはともかく)のこの人に自分の名前の漢字なんて教えているんだろう。
その人の書いた地面の『恵玲奈』を見ながら、そんなことをぼんやり考えた。
男の人はしばらく『恵玲奈』を眺めたあと、その横に今度は『泉水』と書いた。
「俺はいずみ。泉に水で泉水。」
「泉水。」
地面にふたつ並んだ名前を見つめながら、小さい声を出してみる。
「そ。泉水。佐々木泉水」
男の人――泉水は、立ち上がって、手にした枝を遠くに投げた。
枝はひゅるる、と飛んで、どんぐりの森に落ちた。
「恵む、おうへんに命令の令、奈良の奈。」
男の人は、私の言葉を復唱しながら、足元に転がっていた木の枝で地面に『恵玲奈』と書いた。
「この字?」
「そう。」
「ふーん。」
どうして。
どうして、私は初対面(というべきかはともかく)のこの人に自分の名前の漢字なんて教えているんだろう。
その人の書いた地面の『恵玲奈』を見ながら、そんなことをぼんやり考えた。
男の人はしばらく『恵玲奈』を眺めたあと、その横に今度は『泉水』と書いた。
「俺はいずみ。泉に水で泉水。」
「泉水。」
地面にふたつ並んだ名前を見つめながら、小さい声を出してみる。
「そ。泉水。佐々木泉水」
男の人――泉水は、立ち上がって、手にした枝を遠くに投げた。
枝はひゅるる、と飛んで、どんぐりの森に落ちた。