ヒカリ
薄い桃色と山吹色の練りきりを、お裁縫の糸切り鋏のような細工鋏で切るたび、一枚一枚、菊の花弁が生まれていく。


千香さんが作っているのは、はさみ菊と呼ばれる伝統的な和菓子だ。

和菓子を作っている時の千香さんは、とても真剣な目をしていて、私はその瞬間、思わず息すらも止めてしまう。


「あ、来てたん?」

花弁を作り終えた千香さんが体を起こし、工房の入り口にいた私に気づく。

菊の花弁はどれも均整がとれていて、まるで着物の柄のようだ。

「お疲れ様です。」

「お疲れ。今、上がったん?」

「今日は五時で上がりでした。」


千香さんは、ふぅと息を吐いて、工房の時計に目をやる。

「もう6時やん。ずっと見てたん?」

千香さんの言葉に、はい、と短く返事をすると、千香さんが声を出して笑った。

「よう飽きひんなぁ。」

千香さんは、私のそばまでくると、腰に手を当てて、うぃ、と声を洩らした。

最近、仕事上がりや合間に、私はよく工房を見に来ている。
工房では、千香さんをはじめとした、数名の和菓子職人が、餡を練ったり、羊羮を作ったりしていて、いつも甘い香りがしている。




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