ヒカリ
ホームは雪で真っ白だった。

駅前の時計台の針は8時をさしている。

改札を抜けたところで、かがみこんで雪をすくった。

「雪だぁ。」

学生やサラリーマンがうつむき加減で駅の中に消えていく。

雪がこんなに積もっているのに、誰一人、足を止める人はいない。
まるで雪から逃げるみたいだ。

「恵玲奈、こっちでさわりな。」

泉水はそう言って、私の腕を取り、端の方へ連れていった。

「みんな、雪が降って嬉しくないのかな。」

手のひらに乗るくらいの雪だるまを作りながら、泉水を見上げる。

「このへんの人は飽きるくらい雪を見てるんじゃない?」

泉水はそう言って、私の横にしゃがみこむと、

「俺、腹へったー。」

と、悲しい声を出した。


「モーニング、行こうか。」

私が提案すると、泉水は頷いて嬉しそうに立ち上がる。


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