ヒカリ
「ご夫婦?はい。…じゃないでしょ。」

店を出てから、泉水に言うと、泉水は振り返って、おかしそうに笑う。

「説明するの面倒臭かったから。」

泉水は本当に適当なんだから。

「恵玲奈と俺が、仲のいいご夫婦に見えるなんて驚いたけど。」

泉水は雪をすくって、ボールのように丸める。

「ちょっと嬉しかった。」

え、と聞き返した時、私の頭に雪の固まりが当たった。


「いったー!」

泉水は、ストライクー、と叫ぶと走り出す。

泉水の後を追いかけながら、さっきの言葉の意味を何回も何回も考えた。

吐く息は白く、空は高い。
涙も凍りそうな、冬の朝。


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