ヒカリ
泉水に追い付いたのは、駅から少し離れた空き地だった。

すぐそばにはさっきまで乗ってた電車の線路があり、細く真っ直ぐな木が所々に立っている。

泉水は広場の真ん中に立つと、振り返って笑う。

「恵玲奈、ほっぺたが真っ赤。」

「う、るさ、い、な。」

肩で息をしながら、泉水に近づくと、後ろに隠していた雪の固まりを、泉水に向かって投げた。

雪の固まりは、泉水の頭にあたって砕ける。

「いって。」

雪だらけになった泉水を見て、私は吹き出した。
あー、すっきりした。

「恵玲奈、手も真っ赤。」

頭を振って雪を落としながら、泉水はそう言って私の手を握る。

「つめた。手袋、持ってきてないの?」

私は首を振る。

「マフラーもしてないし、恵玲奈、雪をなめてるだろ。」

泉水は眉にしわを寄せながら、私の両手を、自分の両手でくるむように握った。

泉水の長い指に、すっぽりと包まれた私の両手。
泉水の手は温かい。
だんだん、私の手も温かくなってくる。

「泉水ってあったかいね。」

「何枚、着てると思ってんの?」

泉水は得意気に言う。

「恵玲奈は手袋もマフラーもしなくていいな。寒かったら、俺が暖めてやればいいし。」

< 111 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop