ヒカリ
第四章

visitor

桜の開花予想をあちこちで耳にするようになった。

あれから、泉水とは会っていない。
泉水からはたくさんの電話があったけど、私は一度も出なかった。

泉水、と表示されたスマホを何度手に取ったか、わからない。
だけど、この電話に出ることは、いけないことだと思った。

この気持ちに気づいた今となっては。

チャーリーは、毎日散歩のたびに公園の入り口で足を止める。
「チャーリー、公園には行かない。泉水には会わないの。」

何度、私がそう言い聞かせても、ぺたり、と座り込んで抗議をする。

腰を上げないチャーリーを最後は抱き抱えて、私は逃げるようにうちに帰る。

私は何をしているんだろう。

逃げたって、何も解決しないのに。

『一体、なにをびびってるんだよ。
恵梨奈の人生だろ。』


いつか泉水が私に言った言葉。


そう、私はびびってるんだよ。

正人さんとの結婚や、私の決めた人生が、間違っていたかもしれない、なんて、認めるのが怖いんだよ。




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