ヒカリ
服を着替えてお店を出ると、陶子ちゃんはガードレールに軽く腰かけて桃求肥を食べていた。

どうしてここに?
何をしにここに?

陶子ちゃんが私に会いに来る理由が全くわからない。


私はしばらくおいしそうに桃求肥を食べる陶子ちゃんを離れた場所から見ていた。

出来ることなら、このまま走って逃げ出したい思いで。

「あ、恵玲奈さん。お疲れ。」

私に気づいた陶子ちゃんは、食べ終えた桃求肥の包みをぐちゃぐちゃと丸めると、ぽんっと弾みをつけて、ガードレールから飛び降りる。

「探したわよ。和菓子屋ってことしか聞いてなかったから。」

陶子ちゃんの言葉に、ほとんど恐怖を感じた。
そこまでして、どうして。

「ちょっと歩かない?」

陶子ちゃんはカツカツと歩き出す。


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