ヒカリ
「…えれな?」

自分の声だと気づかなかった。
ささやくような、ひどくかすれた声だった。

「そう。えれな。」

正人さんは、深い息を吐いた。

「君に初めて会った時、カルテの名前を見て驚いた。もし生きていれば、ちょうど同じ年頃になってるはずだった。まるで亡くなった我が子に会ったみたいな気持ちになったんだよ、僕は。」

亡くなった我が子。

優しい瞳のわけも、抱いてくれなかったわけも、必要とされてる、という自信のわけも。



私を娘みたいに思っていたから。



怒ってもいいのだと思う。
泣いてもいいのだと思う。
だけど、私はどちらもしなかった。



「勘違いしないでほしい。恵玲奈のことは本当に好きだから結婚したんだよ。
だけど、恵玲奈は僕といても、いつも寂しそうだった。自分からあれがしたい、とかこれがしたい、とか言わないことも気になった。もしかしたら、この子は人を好きになったことがないんじゃないか、って思った。」






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