ヒカリ
「恵玲奈のご両親はイタリアで出会った、と言ったね。」


正人さんの腕の中で、私はしばらく泣いていた。
ようやく泣き止んだ私の顔をのぞきこむようにして、正人さんは言った。

「elenaっていうのはね、イタリア語で『光』に由来する名前なんだよ。」




――光――



私は、
お父さんとお母さんの光。



「僕にとっても、恵玲奈は光だったよ。」



正人さんは、そう言って、目尻にしわを寄せた。



「これからは、思うように、生きて。」



そう言って正人さんは、まだ涙で濡れたままの私の頬にキスをした。



最初で最後のキスだった。


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