ヒカリ
泉水はそう言うと、ギターをケースにしまい始めた。

「で、主婦がこんな時間にこんなとこにいていいわけ?旦那さんは?」

「旦那さんは、救命医なの。毎日、すっごく忙しくて、なかなか帰って来ないんだ。」

「それにしたって、もう11時過ぎてる。危ないから、帰ったほうがいいんじゃない?」

「それもそうだね。チャーリー、帰るよ。」

二人の足元でうとうとしていたチャーリーが、上目使いで私を見上げた。

「じゃあね、泉水バイバイ。」

「待って。うちまで送るから。」

泉水がギターを背中に背負って、バイクを押しながら着いてきた。

「大丈夫。公園でたとこのマンションだから。それに、チャーリーもいるし。」

私の言葉に、泉水は目を丸くした。

「でたとこのマンションって、あの高いやつ?」

「そうだよ。あの高いマンション。しかも、うちはその最上階です。最上階、ワンフロア。」

「すっげぇ。」

公園の出口について、泉水は小さいバイクにまたがると、ヘルメットをかぶった。
ゴーグルのついた真っ赤なヘルメットには、大きな白い星のイラスト。

「…泉水。あのね…。」

聞くのは勇気がいった。
私的には、結構な勇気。

「…明日も、ギター聞きにいっていい?」

「当たり前じゃん。また明日な。」


普通にそう返されて、ホッとした。
明日もまたモンゴリアンチョッパーズが聴ける。
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