ヒカリ
その時、正人さんは40歳だったわけだけど、引き締まった身体や少しくせのある黒髪、それに整った目鼻立ちのせいでそんなに歳上には見えなかった。

私はその日のうちに退院した。
病院の出口に向かって歩いていたら、正人さんが走っておいかけてきた。

もしよかったら、正人さんは言った。

「もしよかったら、一度食事でも行きませんか。」

正人さんは、私の目をじっと見てそう言った。
私も正人さんの目をじっと見たまま、一度だけ、こくりと頷いた。

『必要とされている』
そう感じたから。


正人さんは、私を必要としていた。
心の底から。

そして、それは今も変わらない。

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