ヒカリ
「うちのボーカル、照真(てるま)って言うんだけど、坊さんなんだよ。」

「そうなの?」

「坊さんのくせに、肉くうわ、女好きだわ、しかも、いい声しててイケメンとか、ある意味やばいだろ?」

「やばいねぇ。」

「たまに本堂で練習させてもらうの。俺たち。親父さんも音楽すきで。もちろん坊主なんだけど。年末に仏具を磨くバイトもしてさ。結構、バイト代くれた。」

仏具を磨くバイトって…。
なんだかバチがあたりそうなんだけど。

「こいつがさ、詞つけてるんだけど、ライヴのノリですぐ歌詞変えちゃうんだよ。だから、毎回違ってたりすんの。意味もぐちゃぐちゃだし。よく聞いたら、英単語さけんでるだけの時とかある。だけど、声がほんとよくってさ。もう仕方ないの。オーガスタスのボーカルは照真しか無理。」

泉水はくっくっ、とのどをならして笑った。

「ベースはサク。名前が桜塚(さくらづか)。長いから、サク。俺と同じ大学。ふたつ上だけど2年留年して同い年。来年もたぶん留年するな。ドラムはラリー。すぐ寝るからラリー。」

「すぐ寝るからラリー?」

「そ。知らない?昔、ドラクエで寝る呪文あったじゃん。ラリホーって。」

「ごめん。わからないや。」

すぐ寝るからラリー。ラリホーのラリー。
その場のノリでつけられた感満載のあだ名だ。

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