ヒカリ
「これ、貼っといて。」

泉水は私のスキニーパンツの太ももあたりにぺたりと大きなシールを貼る。

「なにこれ?」

薄暗いからよく見えない。

「バックステージパス。これ貼ってたら楽屋入れるから。」

泉水はそう言いながら、また私のビールに口をつけた。

「うまい。やっぱりビールはアサヒに限るな。」

泉水は満足そうに目を細めて、壁の時計に目をやる。

「そろそろ始まるな。恵玲奈、端っこ行こ。」

泉水が私の袖をつかむ。
泉水と並んで壁にもたれていたら、照明がさらに暗くなった。
ゆるく流れていた音楽もやんでいる。

「すごいワクワクしてきた。」

無意識に呟いていた。
泉水にその小さな声が聞こえたらしい。
視界のすみで、嬉しそうに笑う泉水が見えた。




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