ヒカリ

aquarium

「恵玲奈!」

声がして振り返ると、泉水が走ってくるところだった。

ライヴから一週間が経っていた。
私と泉水は、駅前のよくわからないモニュメントの前で10時に待ち合わせをしていた。

「ごめん。乗り換えがうまくいかなくて。」

泉水は私の前に立つと、白い息を吐きながら、片手で拝む真似をする。

「いいよ。てか、遅れてないじゃん。」

駅前の時計台の針は10時ちょうどを指している。

「え?そう?」

首をひねって時計台を見てから、泉水はほんとだ、と呟いた。

「なんか、恵玲奈を待たせてる気がして。」

そう言って笑う泉水を見て思った。
どうしてわかったのだろう。
私が15分も前にここに着いて、泉水を勝手に待っていたこと。



< 66 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop