男装騎士~あなたの笑顔護ります~
「タイムリミットだよ、お姫様」
少し唇を離すと男はゴソゴソと身じろぐ。
その手には残りわずかとなった注射器。
「最後の注射だ。残念だね、王子さまは来なかった。君を見捨てたんだよ」
悪魔のような囁きを耳元でされる。
私は精一杯の力を振り絞り抵抗を見せる。
「可愛そうに。でも、最後の時まで僕が見届けてあげるからね。苦しくないように、甘美のままに送ってあげるよ」
男はそう言うと、私の腕に注射器を差し込む。
同時に、再び私の唇に自分のそれを重ねた。
身動きの取れない私は、ただ涙を流すだけ―――――・・・。
朦朧としていく意識の中、私の脳裏に浮かんだのは、レオの優しい微笑だった。
「ユキ!!!」
ドアが蹴破られる音と同時に静けさは消し飛び、人の気配が入り込んでくる。