男装騎士~あなたの笑顔護ります~
ユキの精神状態は不安定で、穏やかな時もあれば急に泣き出したり、怯えるように体を強張らせたり目が離せない状態だった。
それ程強いショックを受けたのだと、胸を痛めるしかなかった。
レオはグレンを連れ、王の元を訪れていた。
今回の件の黒幕は王ではないかと疑ってのことだった。
あの男は、一瞬のすきを見て逃げ出してしまったのだ。
あの状況で逃げだせる、それ程の手練れであることは確かだ。
「任務は残念であったな」
王は、多少の演技もなくサラッとそう言いのけた。
「たかが女一匹のために、世界を救えたかもしれん任務を放棄するとは。我が息子ながら馬鹿げた話であるな」
「お言葉ですが。ユキも我々にとっては守るべき人です。その人を犠牲にして世界を平和にはできないと考えます」
「綺麗事よ、そんなものは」
「そうでしょうか」
ピリピリとした空気が流れる。
グレンは黙って双方の会話を聞いていた。