男装騎士~あなたの笑顔護ります~
城に戻り、様子を見に行きたい気持ちを抑え、マリア姫の待つ部屋へと急いだ。
中にはいると、マリア姫は用意された紅茶と菓子をちょうど召し上がっているところだった。
「お待たせしてすみません」
「いえ。あの、ユキさん?のお怪我の様子はいかがでした?」
「え、あ。いや、直接ここに来たので。ですが、心配には及びません。危険な思いをさせてしまったのはこちらです」
「不謹慎ですが、いいものを見させていただきました」
小さく笑う声が聞こえ、下げていた頭をあげるとマリア姫はおかしそうに笑っていた。
いいもの?
「王さまが、おっしゃっていた大切なお方はユキさんなのですね?」
「・・・なぜ」
「一国の王が、家臣に任せずそのように泥だらけになりながら必死で助けようとされていましたもの。見ていればわかります」
「そうか・・・」
恥ずかしく取り乱すさまを見せてしまったのだから当然か。
思い返し、恥ずかしく想いながら顔をあげた。
「いつも、逆なのです」
「逆?」
「男である私が、護ってやらねばならぬところを。いつも守られているのは私の方で・・・。ああして危険を顧みず身体を張ったのは、あれが初めてではないのです」
なにを、初対面の彼女に話しているんだろう。
一国の王が、他国の姫君にこんな情けない話を。