こころチラリ
「洗剤を入れて、お金を入れて。それからコース選択してください。スタートボタンを押したら始まりますから。」


そう言うと速水の方を全く見ずにイスへと戻る。


「あ、ありがとうございます、、、って、もしかして瀧本?」


(あ、バレちゃった。って当たり前よね。)


俯いたまま首を縦に振る。
さらりとショートボブの黒髪が揺れた。



「うち、この辺りなんだ?」

「、、、はぃ」


速水の問いかけに消え入りそうな声で答えると、美波は居辛くなり立ち上がった。


「あの、じゃああたしは帰るので」
「瀧本、何か予定あるか?」


まるで江川陽菜のように被せる様に問いかけられ、美波は一歩後ずさる。


「あ、いえ、あの、あた、あたしは」

「無いなら昼飯付き合わないか?この辺りの店とか知らなくてさ。教えてくれると助かる。」


ふわりと笑った速水の言葉に、NOと言える人はどれくらい居るのだろう。


だが、しかし。


ここに居たのだ。


「すみませんっ!帰り、あ、いや、帰らさせていただきますっ!!」

脱兎の如く、走り去る美波を呆気に取られ眺める速水だった。


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