はじけるピンクの恋心
「え・・・?あっ、あたしも大好きだよ!」


何だ。
ただあたしの思い込みだったんだ。嫌な事なんて言われなかった。ましてやその逆でとっても嬉しい言葉だった。


本当に良かった。
あの嫌な予感は気のせいだったんだ。



「うん。俺はもっともっと好き。・・・だから、別れよう。」



パチパチと音を鳴らしていた線香花火が一瞬にして光を失った。
どうして、こんなタイミングに消えちゃうの?
もしかして本当の嫌な予感ってこれなの?

ううん、違う。これは夢なんだ。悪夢を見ているだけ。

だけど白木の黒縁メガネの奥から流れている涙を見ると、どんなに願ってもこれは現実なんだと思わされる。


立ち上がった白木を見て、あたしも立ち上がり白木に問いかける。


「嘘、だよね?」


「ごめん、俺見てたんだ。祭りの時、拓也に告白されて、キスされてた所。」


「えっ?・・・違う。あれは神崎が!神崎が・・・。」


「うん、知ってる。あれは拓也が悪いんだけど今は山村が何を言っても言い訳にしか聞こえないんだ。ごめん。」


いつかはバレると思っていたけど・・・。
何だ、白木は最初から見てたんだ。じゃあ、白木はずっと平然な振りをしていたの?



「白木、嫌だよ・・・。ねぇ、白木あたし嫌だよ。別れたくない!」


人の心を揺らぎ止める事なんて無理だとわかっていても、今のあたしは子供の様にわがままになっていた。



「山村、ごめん。」


そう言って白木がしてくれたキスは唇にではなく、おでこにそっと触れるキスだった。
これが最後のキスになるのかな。


あたしに背を向け暗くなった公園から出ていく白木。
追いかける事すらできない。


今のあたしにできるのは精一杯、白木の事を想って涙を流す事だった。

白木はもう別れる事を決めていたのかな。わざわざ誘ってくれたのは別れを言うためだった?

そして枯れるほどの涙を流した後、あたしは心を落ち着かせ家に帰った。
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