はじけるピンクの恋心
「・・・ただいま。」


「うわ、紗奈テンション低すぎだろ。何時間か前は気持ち悪いテンションで“いってきマンゴー”って言ってたクセに。」


家に入ると丁度、お風呂上がりの圭太の姿があった。



「・・・圭太。終わっちゃった。」

別れた事にショックが大きいあたしは弟相手に本気で泣き付いた。


「は?何がだよ。あ、もしかしてあれか?白木って奴と別れたか?」



圭太の顔からして冗談で言っている事がわかった。

あたしも冗談だと思いたい。
これがただの夢であってほしい。


「・・・そうだよ。別れたんだ。」


「はっ?マジかよ。・・・他の男でも見つけろよ。なんていうのは冗談だけどな。」



今はそんな馬鹿げた冗談が妙に痛い。

そういえば、白木と付き合い始めた頃、圭太から“夏休みの終わりの方になって別れたなんて言うなよ”と言われた気がする。


別れちゃったよ。
本当に終わっちゃったよ。
冗談でも夢でもなく、これは現実。


ねぇ、白木。
あたし白木が大好きだよ。白木もあたしの事、大好きだと言っていたよね?
お互いが好きなだけじゃダメなのかな。


両想いになれば全て上手くいく。
そう思っていたあたしは自惚れていたんだ。

恋愛って両想いが全てじゃないんだ。
・・・難しいよ、恋愛なんて。


こんな想いをするのなら恋なんてしたくなかった。
だけど、だけどね・・・矛盾しているけど白木を好きになったのは後悔していないよ。



「紗奈、俺が良い事言ってやるよ。お前と白木って奴は復活する!」



こんな、ふざけた弟の言葉に少しだけ元気を取り戻しながら、あたしは部屋へと入り眠りについた。


8月31日、夏休み最終日。
あたしの恋があっという間に散った高校1年生の夏が幕を閉じた。
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