はじけるピンクの恋心
「紗奈ちゃん、一緒に帰れる?」


放課後、あたしを誘ったのは梓ちゃんだ。
もちろん嬉しい事だけど、今日はそんな気分ではなかったのであたしは断ってしまった。


「ごめんね、梓ちゃん!今日は・・・1人で帰りたいんだ。」


「・・・そっか。あまり悩みすぎないようにね?」


梓ちゃんはあたしの様子に気づいたのだろうか、あたしに優しい笑顔を向け教室から出て行った。


皆が次々と教室から出て行き、教室はあたし1人になった。
いつも騒がしい教室が、今は物音1つ聞こえない。


自分の席に座り、誰も座っていない前の白木の席を見つめる。
無造作にイスが横に向いてある。机だってちゃんと真っ直ぐになっていない。


今、白木が教室にいて2人きりだったら良かったのに。
いや、ダメか。それだと白木が嫌がっちゃうよね。あんなに避けられているんだもん。


「・・・あ。」


微かに後ろから聞こえた声。咄嗟に振り返るあたし。


「あっ。」


あたしの口から漏れた声。


「・・・白木。」


そう名前を呼んでみても、その人はあたしを見てくれない。一瞬目が合っても、すぐに逸らされてしまう。

あたしはドアの前に立っている白木の近くへと足を動かした。


「ねぇ、白木!」


精一杯の勇気とも言えるだろうか。
あたしはめげずに白木に呼びかける。だけど予想通りの白木の態度。

どうしてそんなに冷たいのだろう。どうしてそんなに悲しい顔をしているのだろう。


「ね、白木。あたし達、別れちゃったけど友達・・・だよね?友達に戻っただけだよね?」


今にも消えそうな震える声で白木に問いかける。
そうでもしないと、あたしは納得できないよ。



白木、あたし達は恋人じゃない。
だけど・・・友達だよね?
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