はじけるピンクの恋心
神崎の笑顔を見るとなぜか心がホッと安心した。
さっきの白木の言葉が、顔が、何もかもが脳裏をよぎって仕方がないのに神崎の笑顔を見るだけで一瞬だけだけど忘れられる。


「神崎、待たせちゃってゴメンね。」


「気にすんなって。それより財布あったか?」


「うん、ちゃんとあったよ。じゃあ行こっか。」



無理に笑顔を作り前へ前へと足を進めた。
そんな私を変に思ったのか神崎はぎこちない雰囲気で「何かあったのか?」と問いかけてきた。


「何で?何にもないよ。お腹すいたから早く食べたいだけ!」


「・・・ふーん。」


神崎は腑に落ちないのか納得していない顔だった。それから「何かあったなら言えよー。」と、わざと明るく付け足した。



ああ、また神崎に心配をかけてしまった。

自分の情けなさと、白木が好きなのに、あたしの事を好きだと言ってくれている神崎に申し訳ない気持ちが込み上げてきた。


もう白木への気持ちをこのまま殻に閉じ込めた方が良いのか。
だけど、それだと後悔しちゃう。
中々答えを見つけ出せないあたしには、この問題が今までの人生の中で一番の難題だった。


「なあ、山村。携帯鳴ってる。」

神崎に言われ鞄の中で鳴っている携帯を取り出した。
梓ちゃんからの電話だ。


「神崎、ごめん。梓ちゃんからの電話。」


神崎にそう告げて電話に出た。


『もしもし、梓ちゃん?』


『あ、紗奈ちゃん?ゴメンね、いきなり。』


『ううん、どうしたの?』


『あのね。今、神崎くんといるよね?』


その問いに何の迷いもなく、あたしは『うん』とだけ答えた。
梓ちゃんは、あたしが神崎とスイーツを食べに行く事は知っているからだ。


『あのね、お知らせがあるの。白木くんと付き合う事にしたんだ。』
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