はじけるピンクの恋心
・・・-


「いやー、美味しかったね!」


「まぁな。また行くか?」


帰り道、神崎はあたしに気を遣っているのか笑顔を絶やさなかった。その笑顔にあたしは何だか苦しい想いが込み上げてくる。


「じゃあ、あたし1人で大丈夫だから。ばいばい。」


心配させない様にあたしも笑ってみせる。
神崎は一度心配そうな顔を見せるとすぐに笑顔で「じゃあな、また明日!」と手を振ってくれた。

曲がり角を曲がり家へと足を進める。
空を見上げると綺麗な青空が広がっていて吸い込まれそうなくらいの景色だった。
わぁ、凄い!なんて思いながら前へ前へと進む足。
なんとなく気分が晴れて来た気がした。

そんな時だった私の視界の先でぶっきら棒に制服姿で立っている白木を見たのは。


「白・・・。」

思わず話しかけそうになったが、何やら電話をしている様ですぐに話し掛けるのを止めた。それに冷静に考えるとあたしが今、白木に話し掛けて何を話せばいいのだろう。きっと白木は迷惑するに違いない。


ここはこの道を引き返して遠回りだけど反対方向から帰ろう。そう思い体を後ろへと回転させる。
今のあたしには白木に話し掛けることも、そのまま通りすがる勇気もない。

だけどやっぱり気になってしまって後ろを振り返ってしまう。
あの様子だと白木は誰かに電話をしているみたいだ。


「拓也?あー、うん。いや俺もごめん。」


微かに耳に入ってきた声は仲直りの言葉だった。
男の子って案外簡単に仲直りできるものなんだね。女の子はズルズル引きずっちゃって仲直りには時間がかかるよ。


「渡辺?渡辺とは、えーと・・・まぁ・・・な?」


次に耳に入ってきた言葉は梓ちゃんの事だった。この雰囲気だと白木は神崎に梓ちゃんと付き合ってる事をお知らせしたのかな。

あー、ダメだ。
あたしってば切なすぎて涙が出ちゃう。
もうこんなとこで盗み聞きなんてしてないで家に帰ろう。


勢いよく足を踏み出した。
その瞬間だった。

気持ちが悪い。
お腹がムカムカして頭がガンガンと痛む。
真っ直ぐ立つことさえ出来ず、その場に座り込んでしまう。
これはきっと神崎と食べた美味しいスイーツ達のせいだ。
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