はじけるピンクの恋心
[着信 渡辺梓]

光るディスプレイには梓ちゃんの名前が表示されていた。
それを見た瞬間にあたしは思わず布団に潜り込んでしまった。
見たくないものを見てしまった。そういう気持ちになったのだ。


「山村、持ってきた。・・・寝てる?あ、携帯鳴ってる。」


なんだか今さら布団から顔を出すのも恥ずかしく寝た振りを貫き通す事にした。
でもこれだと、また白木の会話を盗み聞きしてるみたいだ。


「もしもし渡辺?どうしたの・・・?」


梓ちゃんと電話をしている白木の声が聞こえる。
何を話しているのかはわからない。だけど白木と電話している梓ちゃんが羨ましかった。


「うん、好きだよ。じゃあ。」


・・・え?
耳を疑った。
もう電話で“好きだよ”なんて言い合いする様な仲なんだ。
あたしと付き合っていた頃は電話で“好きだよ”なんて白木は言ってくれただろうか。

動揺を隠せないあたしは布団の中でドキンドキンと音を立てていた。
本当に本当に聞いて後悔をしてしまった。
こんなことなら本当に寝ていれば良かった。

そう思う度にひどく悲しくなる。
どうしよう、立ち直れないかも。
・・・そんな事を思っている時だった。


「山村、今の聞いてただろ?」


え?
突然言われた言葉にビックリしながらあたしは盗み聞きをしていた事がバレて冷静にはなれなかった。
そんなあたしを見て白木は言葉を続ける。


「あれが俺の気持ちだから。もう嘘はつかない。」


嘘はつかないって?
それって私に今まで“好き”と言っていたのが嘘だって事?
ちょっと、待ってよ。全然わからない。


「そういう事だからさ、考えておいてよ。」

「え?」


何の事?
その言葉が中々私には口にできなかった。
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