はじけるピンクの恋心
「ほら、行くよ!」


突っ立ったまま動かない圭太に財布を渡し、家を出た。
なぜだか少し肌寒く感じたのは夕方だからだろうか。

スーパーに着くと丁度夕暮れ時とあって、おばちゃんの姿が多数見かられた。
そんな中、制服姿の女子高校生とラフな黒のTシャツにカジュアルなジーンズを着こなしている男子高校生に見える中学3年生。
・・・周りからは同棲中の彼氏と彼女に見られちゃったりして。
そんなアホな事を自分の弟なのに考えてしまって我ながら恥ずかしくなった。


「紗奈、何作んの?」

「簡単なもの。あとお店の中では紗奈って言わないでよね!勘違いされるでしょ。」

「誰も勘違いしないだろ。俺だって彼女いるんだし。」


ひねくれた弟はやっぱりムカつく。
こんな弟の彼女をしてくれている良い子を是非見てみたいものだ。

私はカゴを片手に何も決めてもいない夕食のメニューを探していた。
簡単なもので、できるだけ早く食べれるのが良いよね。


「圭太、今日はメンチカツね。」

「今から作んの?」

「違うよ、始めから作ってるやつ。」


それを聞くと圭太は納得した様に“紗奈が作れる訳ねぇもんな”と付け足した。


「ほら、圭太。もうだいたい買う物決まったからレジ行くよ。」

「はいはい。」


少し重くなったカゴを無理矢理圭太に持たせレジに向かう。
ちょっとだけ並んだ後にお会計をして荷物はもちろん圭太が持ちスーパーを出た。


「俺、コンビニ行くから先に帰ってて。」


突然そんな事を言い出したかと思うと目の前のコンビニには女の子が数名たまっていた。
そして圭太はその女の子の方へ向かうと1人の女の子に話し掛けていた。

あれか、圭太の彼女は。
ふわふわのロングヘアーで優しそうな女の子。
圭太も青春しちゃってるんだな。
なのにあたしってば・・・バカみたい。

たかが弟のラブラブ風景を見てしまっただけなのに、あたしの心は酷く傷つかれた気がした。

白木、さっきのは何だったの?
そんな事も電話で聞けない自分が嫌だった。
そんなちっぽけな勇気もない自分が情けなかった。

あたしはただ白木の事が好きなだけなのに。
この難しい問題をどうやって解決して進んでいけばいいの?
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