泣いてる彼女を見つけた
シリアスなはずなのに、なぜか漫才になってしまった。
幸もこれはヤバイと思ったのか、一変して悲しそうな顔をして、漫才ではない口を開いた。
「北島だよ北島。
あのバカに話つけてたんだ」
北島とは、彼女を傷つけた男である。
自分は幸とヤったんだ、と虚言を一年間に渡っていいふらし、幸の変な合成写真などもばらまいた。
なんの目的があったのかわからない。
けれど、北島と仲が良かった幸は傷ついた。
一年間彼女はそういう目で見られていたんだ。
裏切りも同然だ。
そんな恐怖の対象である彼に果敢に立ち向かったというのだから、些か驚きを隠せなかった。
男前すぎるんだよな、幸って。
「…ふぅん、なんだって?」
「押し倒された」
「……は?」
「だから、押し倒された」